日本のヤングケアラーの現状は?支援と課題は?20人に1人はヤバい…

 

ヤングケアラー(Young Carer)は、18歳未満の子どもや若者が、家族の介護や世話を日常的に行っている状況を指します。この子どもたちは、大人が担うべき家事や介護の役割を引き受けていることが特徴であり、日本ではその実態が次第に明らかになりつつあります。ヤングケアラーは、家事、介護、感情的なサポートなど、多岐にわたる責任を負っており、その結果として学業や生活全般に大きな影響を受けることがあります。本稿では、ヤングケアラーの特徴、抱える問題、そして支援の現状について、最新の調査データを基に解説します。

ヤングケアラーの特徴

ヤングケアラーは、病気や障害を持つ家族、特に親やきょうだいの世話をしている子どもたちです。彼らは家事や介護だけでなく、家族の感情面でのサポートや日常生活の管理を引き受けることが多くあります。日本の調査では、特にきょうだいを世話しているケースが多く、中学生の約60%以上がきょうだいの世話をしていると報告されています。親の世話をしている場合、主に精神疾患や身体的な障害が原因であることが多いです。

ヤングケアラーの役割には、食事の準備、洗濯、掃除などの家事、買い物や家の修理といった家庭管理、そして家族の精神的なサポートが含まれます。彼らが一日にケアに費やす時間は3時間から7時間が多く、時には7時間以上に及ぶこともあります。ヤングケアラーの約半数が「ほぼ毎日」このようなケアを行っているとの調査結果もあります。

ヤングケアラーが直面する問題

ヤングケアラーは、他の子どもたちと比較して、多くの困難を抱えています。特に、学業への影響が顕著です。日々の家事や介護の負担が大きくなると、学校に通う時間や勉強する時間が制限され、学力の低下や欠席が増加します。このような影響により、進学や就職の選択肢が狭まり、将来のキャリア形成にも悪影響を及ぼす可能性があります。また、家族を支える責任感から、自分の選択肢を制限してしまうことも少なくありません。

さらに、ヤングケアラーは社会的な孤立感にも苦しんでいます。家事や介護の負担が重いため、友人と過ごす時間が限られ、学校での欠席が増えることで友人関係が希薄になることがあります。また、家庭内の複雑な事情を他人に話すことができず、相談する機会が減少し、ますます孤立してしまうことが報告されています。ヤングケアラーの孤立感は、心理的なストレスや不安の原因となり、彼らの精神的な健康にも影響を及ぼします。

精神的な負担も大きな問題です。家族の介護をすることで、子どもたちは日常的にストレスにさらされることが多く、特に親が精神疾患を抱えている場合、その影響は大きくなります。長時間、家族の愚痴を聞いたり、感情の変動に対応したりすることで、子ども自身が精神的に不安定になることがあります。さらに、自己肯定感の低下も指摘されており、年齢に見合わない責任を負うことで、自己評価が低くなりがちです。これにより、将来的な社会生活や職業選択にも影響が出る可能性があります。

日本におけるヤングケアラーの現状

日本では、ヤングケアラーの実態が徐々に明らかになりつつあります。厚生労働省が実施した調査では、2021年時点で小学校6年生の約6.5%、中学2年生の5.7%、高校2年生の4.1%が何らかの形で家族のケアを行っていることが分かっています。特に通信制高校生においては、約11%が家族のケアを行っているとの報告があります。ヤングケアラーの中には、きょうだいの世話をしているケースが多く、主に発達障害や知的障害、幼い年齢のためにケアが必要とされています。

また、親の世話をしている場合、精神疾患や身体障害が主な原因となっています。母親が精神疾患を抱えているケースが多く、父親の場合は依存症が原因であることが多いです。これらの世話を日常的に行っているヤングケアラーは、自分の置かれている状況を「当たり前」と認識し、他の家庭との違いを理解できないことが多いため、相談することをためらいがちです。その結果、孤立しやすく、支援を受ける機会を逃してしまうことが多いです。

ヤングケアラーへの支援と課題

日本では、ヤングケアラーを支援するための取り組みが徐々に広がっています。政府は、ヤングケアラーに対する支援を強化するため、調査やシンポジウムを実施し、支援ネットワークの構築を進めています。また、地域ごとにヤングケアラーを支援するためのプロジェクトが進行中であり、福祉や介護、教育機関が連携して支援体制を整えています。具体的な支援策としては、相談窓口の設置や、ヤングケアラーが利用できる福祉サービスの提供などが挙げられます。

しかしながら、支援体制はまだ十分とは言えません。ヤングケアラーの多くが、自分が支援を必要としていることに気づかないため、支援を求めることができない現状があります。また、支援を提供する側も、ヤングケアラーの実態を十分に把握しておらず、適切なサポートが提供されていないケースも多いです。例えば、介護保険や福祉サービスの利用が進んでいないことが課題となっており、家庭内の負担を軽減するために、これらの公的サービスの活用が求められています。

まとめ

ヤングケアラーは、家庭内で大きな責任を負っており、その影響は学業、精神面、社会生活に広がっています。彼らを支援するためには、社会全体での認識向上が必要であり、政府、自治体、学校、福祉機関が連携して、適切な支援を提供する体制を整えることが求められます。ヤングケアラーの問題は個人や家庭の問題にとどまらず、社会全体で解決すべき重要な課題です。