1. 「小1の壁」とは
まず、「小1の壁」の問題についてもう少し詳しく見ていきます。これは、幼稚園や保育園では多くの施設が長時間保育を提供しているのに対し、小学校では標準的な授業時間が短く、また学校が終わった後に子どもを預ける学童保育も、限られた時間しか利用できないことが原因です。特に共働きの親にとっては、子どもが学校から帰ってくる時間に合わせて仕事を終わらせることが難しく、親が仕事を辞めざるを得なくなるケースや、仕事の時間を調整せざるを得ないことがあります。
例えば、神戸市では多くの保護者が「小1の壁」を強く感じています。保育園や幼稚園での延長保育は、朝早くから夜遅くまで対応してくれるため、親が安心して仕事に専念できる環境が整っています。しかし、小学校に進学すると、このサポートが急に減少し、特に朝の時間や放課後のケアが十分に提供されていないと、多くの家庭で問題が発生します。朝は学校の門が開く時間が遅いため、早朝に出勤しなければならない親は子供をどこに預けるかで悩むことが多く、また学童保育の終了時間も早いため、仕事が終わるまでに迎えに行く必要があるなど、共働き家庭にとっては大きな負担となります。
2. 神戸市の取り組み
神戸市は、「小1の壁」を解消するために、様々な施策を導入しています。特に、共働き世帯が安心して子どもを預けられる環境づくりに力を入れています。
(1) 早朝の受け入れ体制の強化
神戸市では、一部の小学校で早朝の受け入れ体制を整備しています。具体的には、学校の校門を通常よりも早く開け、子供たちが安心して朝の時間を過ごせるようにしています。このような取り組みは、親が出勤前に子供を安全に学校に預けられることを目的としています。例えば、神戸市中央区の学校では、地域のボランティアや警備員が見守り役を務め、子供たちが登校時間前に学校で遊んだり、自習を行ったりできる場を提供しています。このような施策により、親が仕事に集中できる環境が整えられています。
また、大阪府の豊中市など他の自治体でも同様の取り組みが進んでおり、神戸市もそれを参考にしながら、さらなる改善を図っています。
(2) 放課後の学童保育の充実
放課後の学童保育は「小1の壁」を乗り越えるための重要な施策の一つです。神戸市では、公立の学童保育に加え、民間の学童保育も拡充されています。特に、共働きの親が長時間働いていても安心して子どもを預けられるように、学童保育の時間を延長する取り組みや、質の高い学びを提供する学童が増えてきています。
例えば、神戸市垂水区では、創造性を育む活動を取り入れた「アフタースクール コドシア」などの民間学童が開設され、子どもたちが学びと遊びを両立できる環境を提供しています。このような民間学童の拡充により、親の選択肢が広がり、学童保育に対する需要に対応しています。
(3) 地域コミュニティとの連携
神戸市では、地域のコミュニティとも連携し、子供の見守り体制を強化しています。地域のボランティアが朝や放課後に子供たちの安全を見守る活動を行っており、これにより子どもが安心して学校生活を送ることができるようになっています。また、地域のシニア世代や退職した教員が見守り員として活躍し、子どもたちの安全を確保する取り組みが進められています。これにより、地域全体で子どもを育てる意識が高まり、共働き世帯のサポート体制が強化されています。
3. 課題と展望
神戸市の「小1の壁」への取り組みは、多くの家庭で高く評価されていますが、いくつかの課題も残されています。まず、学童保育の需要が増加する中で、すべての家庭が必要なサポートを受けられるわけではないという問題があります。特に、学童保育の利用者数が限られているため、定員オーバーで利用できない家庭も少なくありません。このため、神戸市は学童保育の枠をさらに拡大し、すべての家庭が利用できるようにする必要があります。
また、地域によって学童保育の質や提供されるサービスが異なることも課題の一つです。例えば、神戸市の西側と東側では、学童保育の選択肢や提供されるサービスに大きな差があり、親がどの地域に住んでいるかによって受けられる支援が異なります。このような地域格差を解消し、すべての家庭が平等に支援を受けられるような体制を整えることが求められています。
さらに、神戸市では保護者のニーズに応じた柔軟なサポート体制を構築する必要があります。特に、親が急な残業や出張で帰宅が遅れる場合でも、子どもを安心して預けられる環境を整えることが重要です。そのためには、学童保育の時間延長や、急な対応が必要な場合の代替サポートなどを提供することが求められています。
4. まとめ
神戸市は「小1の壁」を解消するために、様々な施策を進めており、共働き世帯が直面する課題に対して積極的に対応しています。早朝の受け入れ体制や放課後の学童保育の充実、地域コミュニティとの連携により、多くの家庭が安心して子どもを育てながら仕事を続けることができるようになっています。しかし、まだ課題も多く、特に学童保育の需要に対する供給の不足や地域格差の解消が今後の重要な課題として残っています。神戸市は今後も、共働き家庭のニーズに応じた柔軟なサポートを提供し続けることで、子育てと仕事の両立がしやすい環境を整えていくことが期待されています。