目次
はじめに
上場廃止とは、企業が証券取引所における上場を取りやめることを指します。これは通常、証券取引所の審査基準を満たせなくなった場合や、経営上の理由により企業自らが非上場化を選択した場合に行われます。上場廃止には、経営権の安定化やコスト削減といったメリットがあり、近年では戦略的な経営判断として上場廃止を選択する企業も増えています。
特に、経営の効率化や長期的な経営戦略を重視する企業が、上場廃止を通じて柔軟な経営体制を構築し、将来的な再上場も視野に入れるケースも見られます。背景には、外部からの株主による影響や短期的な業績のプレッシャーから解放されることで、より持続可能な成長を実現したいという経営陣の意図が含まれています。また、完全子会社化による親子上場の解消や、MBO(マネジメント・バイアウト)などに伴う上場廃止は、近年特に注目されています。
さらに、上場企業にはガバナンス強化の義務があり、四半期ごとの報告や監査費用など、上場を維持するための負担が大きいという点も、上場廃止の動機として挙げられます。こうした経営コストの削減により、企業は効率的な資金運用を図ることができ、再建に向けた自由度の高い経営が実現します。
この記事では、上場廃止に伴う多面的なメリットとその背景について、さまざまな事例や戦略的視点から解説していきます。これにより、上場廃止が単なる経営不振による措置ではなく、企業の経営戦略として意図的に選ばれる場合も多いことを示し、非上場化が企業にもたらす可能性について理解を深めていきます。
上場廃止の主な理由
企業が上場廃止を選択する理由は多岐にわたり、通常は戦略的な経営判断や企業の状況に基づいて行われます。ここでは、上場廃止の代表的な理由を解説します。
1. 経営方針の転換(MBOやTOBによるもの)
上場企業が非上場化する主な方法として、MBO(マネジメント・バイアウト)やTOB(株式公開買付け)が挙げられます。MBOは経営陣が自社の株式を取得し、経営権を自ら掌握する手法であり、経営の自由度を高め、外部からの干渉を減らすことができます。TOBは、特定の企業やファンドが公開買付けにより上場企業の株式を取得し、完全子会社化することで非上場化を実現する方法です。
2. 経営不振や業績悪化
上場企業が経営不振や業績悪化により上場基準を満たせなくなった場合、証券取引所からの上場廃止基準に該当することがあります。この場合、企業は上場を維持するための対策を講じるか、非上場化して経営再建を図るかの選択を迫られます。
3. 完全子会社化と親子上場解消
親会社が子会社を完全子会社化することで、グループ内での資本関係を整理するケースも上場廃止の理由となります。親子上場を解消することで、グループ全体で戦略を統一しやすくなり、効率的な資源の集中が可能になります。
4. 法令違反や上場契約違反
上場企業が法令違反や上場契約違反を犯した場合、証券取引所の上場基準に抵触し、上場廃止となることがあります。これには、有価証券報告書の虚偽記載、監査法人からの「不適正意見」などの要件が含まれます。
5. その他(株式の譲渡制限、反社会的勢力の関与など)
その他にも、株式の譲渡制限や反社会的勢力との関係、企業の銀行取引の停止、破産手続きの開始など、証券取引所の規定に抵触する要因によって上場廃止に至るケースがあります。
上場廃止による経営への影響
上場廃止を選択することで、企業は外部の株主や市場からのプレッシャーから解放され、より独立した経営が可能になります。ここでは、上場廃止がもたらす主な経営上の影響について解説します。
1. 経営の自由度向上
上場企業は、株主や市場からの期待に応えるため、短期的な業績改善を求められることが多く、自由な経営戦略を追求するのが難しくなることがあります。上場廃止を選択することで、経営陣は長期的な成長を視野に入れた戦略を自由に立てることができるようになります。これは特に、持続可能なビジネスモデルや新規事業の開発など、長期的な投資を要する戦略において重要です。
2. 社内ガバナンスの変化
上場企業であることは、ガバナンスに関する多くの規則や基準に従う必要があるため、社内の意思決定プロセスが複雑化しがちです。しかし、非上場化によって、社内の意思決定はより迅速かつ柔軟になります。これにより、従業員の役割が明確化し、ガバナンスの簡素化が進む場合もあります。
3. 外部株主からの干渉の減少
上場企業には、多様な利害関係者が存在し、それぞれ異なる期待や要求を抱えています。上場廃止により、企業はこうした外部株主の影響を受けずに、企業内部のビジョンや価値観に基づく経営が可能になります。特に、企業の株主が多い場合には、意見の分散や対立が解消され、経営が一体化することが期待されます。
4. 長期的な視点での事業運営の可能性
上場企業として運営する場合、短期的な収益性が重視されることが多く、株価維持のための施策に追われることも少なくありません。一方、上場廃止後は、株価への即時的な反応を意識する必要がなくなるため、持続的な成長や長期的な利益向上に資する事業計画が可能になります。
コスト削減と効率化
上場廃止により、企業は上場を維持するための多額のコストを削減でき、より効率的な経営が可能となります。以下は、非上場化によって削減可能なコストの主要な要素です。
1. 上場維持にかかるコストの削減
上場企業には、四半期ごとの決算報告や定期的な有価証券報告書の提出など、多くの財務情報開示の義務が課されており、これに関わる人件費や事務費が大きな負担となります。また、監査法人への支払いや法律上のコンプライアンス費用も相当な額に上ることから、上場廃止によりこうしたコストを削減することが可能です。
2. 報告義務の削減と監査費用の減少
上場企業は、投資家向けに継続的な情報開示が義務付けられており、これには四半期決算や業績予想の開示などが含まれます。これらの手続きは多くの人材と時間を必要とするため、上場廃止により定期報告の負担が軽減され、社内リソースを事業運営に集中させることができます。
3. IR活動や四半期決算の負担軽減
上場企業は、投資家向け広報(IR)活動として株主総会やプレスリリース、投資家向け説明会なども頻繁に実施する必要があります。上場廃止によってこれらのIR活動が不要になるため、コストだけでなく社内業務の効率化も期待できます。また、四半期ごとの決算報告義務がなくなることで、業績発表の頻度が減り、長期的な経営戦略に集中しやすくなります。
4. コーポレート・ガバナンス強化に必要な費用の削減
上場企業はガバナンス強化の一環として、社外取締役の選任やコンプライアンス体制の整備などが求められます。非上場化により、これらのガバナンス維持にかかるコストを削減できるため、経営資源をより重要な事業領域に投入することができます。
資金調達と経営戦略の自由化
上場廃止により、企業は新たな資金調達方法や柔軟な経営戦略の実施が可能になります。以下に、上場廃止が資金調達と経営戦略に与える影響について説明します。
1. 新たな資金調達手法の活用
上場企業としての資金調達は主に株式市場からの資金調達が中心となりますが、上場廃止後は銀行融資やプライベートファンドからの調達も視野に入れ、より多様な方法で資金を得ることが可能です。また、金融機関からの融資は株価の変動に左右されず、経営の安定性を保ちやすいメリットもあります。
2. MBO後の財務戦略
MBO(マネジメント・バイアウト)は、経営陣が企業を買収し、非上場化を実現する手法です。MBOにより経営権を集中させることで、株主の意見に縛られることなく財務戦略を立てることができます。また、MBO後に組織再編を図り、経営基盤が安定した段階で再び上場を検討するケースもあります。
3. 再上場の可能性とそのプロセス
上場廃止後も、企業が財務状況を改善したり成長戦略を遂行できれば、再び上場を目指すこともできます。非上場期間中に事業再編や経営改善を行い、再度成長の軌道に乗せてから再上場を目指すことで、投資家や市場からの評価を高める戦略も存在します。この戦略により、企業は柔軟な資金調達と経営戦略の自由化を実現しやすくなります。
経営権の安定化と敵対的買収防止
上場廃止は、企業が経営権を安定化させ、外部からの敵対的買収リスクを抑制するための手段としても活用されます。上場廃止により経営陣は企業の株式を完全に掌握し、経営の自由度を高めることができます。
1. MBOによる経営権の集中
上場廃止は、特にMBO(マネジメント・バイアウト)によって行われることが多く、これにより経営陣が企業の株式を取得して経営権を確保します。これにより、経営方針や事業戦略において株主の意見に左右されることがなくなり、長期的な視点での成長戦略を遂行しやすくなります。経営陣が主導権を握ることで、企業の利益に専念した意思決定ができるようになります。
2. 敵対的買収リスクの低減
上場企業は、敵対的な買収のリスクにさらされています。上場廃止によって株式を非公開化することで、外部からの買収を受けにくくなり、経営が安定します。特に、MBOやTOB(株式公開買付け)を通じて上場廃止を行うことで、経営陣や親会社が企業の全株式を保有し、敵対的な買収を未然に防ぐことが可能です。
3. 企業価値向上のための内部施策の自由化
上場企業は市場や投資家からの要求に応じて短期的な収益改善策を優先しがちですが、非上場企業であれば、長期的な視点で企業価値向上を図ることができます。例えば、長期間を要する研究開発や大規模な資本投資が必要なプロジェクトも、自由に推進できるようになります。
市場とブランドイメージへの影響
上場廃止は、企業の市場でのブランドイメージや信用度にも大きな影響を及ぼします。上場企業であることは、一般的に社会的信用やブランド価値の向上につながるため、非上場化の決断は慎重に行う必要があります。
1. 「上場企業」ブランドの喪失と対策
上場企業であることは、企業の社会的信用やブランドイメージの一部となっており、投資家や取引先、顧客からの信頼の証ともなっています。非上場化により、この「上場企業」としてのブランドが失われることで、顧客や取引先が信頼を損なう可能性もあります。これに対応するためには、上場廃止に至った背景や今後の事業計画を丁寧に説明し、ステークホルダーに理解を得ることが重要です。
2. 信用度の変化とその対応
上場廃止により、企業は信頼性や透明性の点で不安視される場合もあります。金融機関や取引先への説明をしっかりと行い、信頼の低下を防ぐ努力が必要です。上場廃止後も内部監査体制を維持し、情報開示を自主的に行うなど、透明性を確保することで信用を維持する取り組みが有効です。
3. ステークホルダーとの関係の再構築
上場廃止は、企業のガバナンス構造や経営方針に関わる大きな変更であり、株主や取引先、従業員など、あらゆるステークホルダーとの関係性が見直されます。これにより、長期的な視点での信頼関係が築かれると同時に、上場廃止による変革に対する理解を得やすくするための積極的なコミュニケーションが重要になります。
上場廃止の事例分析
上場廃止は企業の経営戦略や市場環境によって様々なケースで行われており、実際に上場廃止を選択した企業の事例分析を通じて、その背景と成功の要因を理解することが重要です。以下に代表的な上場廃止の事例を紹介します。
1. すかいらーくの事例
すかいらーくは、2000年代に業績悪化からの再建を目指し、2006年にMBOを実施し上場を廃止しました。当時、株主数が多く経営に対する意見が分散し、改革の妨げになっていたことが背景にあります。MBO後、経営陣は投資ファンドの支援を受けながら、業績回復に集中し、最終的に再上場を果たしました。この事例は、上場廃止が経営の自由度向上とスピーディな意思決定にどれほど有効であるかを示しています。
2. NTTドコモの親子上場解消
NTTドコモは、親会社であるNTTによるTOBを受けて2020年に上場廃止となりました。NTTドコモを完全子会社化することで、グループ全体での戦略統一が可能になり、利益をグループ内に留めて海外展開などに向けた成長戦略を加速することが目的でした。このケースは、親子上場の解消によりグループ全体での経営戦略が強化された事例の一つです。
3. 東芝の非上場化と再建
東芝は、不正会計問題や原発事業での巨額損失により経営危機に陥り、事業再編と経営再建のために上場廃止を視野に入れました。主要事業の一部を売却し、非上場化を通じて経営の再建を進めることが期待されています。このようなケースは、経営改善と再構築を目的とした上場廃止の代表的な例です。
4. 株式会社ワールドの再上場戦略
アパレルメーカーの株式会社ワールドも、経営再編のためにMBOで一度上場を廃止し、その後に成長を果たし再上場した事例です。これは、上場廃止後に事業の基盤を整え、再度の成長機会を狙って再上場を果たしたケースで、企業の柔軟な資金調達戦略と成長の視点から興味深い例といえます。
5. 海外事例:米国のデル・テクノロジーズ
米国のデル・テクノロジーズは、経営権を集中させるために上場廃止を決断し、その後事業の成長が確保された段階で再上場を果たしました。デルの場合、株主の要求から解放されることで積極的な設備投資や研究開発に注力し、事業の競争力を強化した後、再度の上場に踏み切っています。
上場廃止に向けた準備とプロセス
上場廃止の決断は、企業にとって大きな転機であり、その準備や手続きは慎重に行う必要があります。以下に、上場廃止に向けた具体的な準備とプロセスについて解説します。
1. 上場廃止の決定と株主総会での承認
上場廃止を進めるにあたって、まず経営陣が上場廃止の方針を固め、正式に決定します。これは、経営の自由度向上やコスト削減といった目的に基づくものが一般的です。決定後、臨時株主総会を開催し、上場廃止の承認を得ることが求められます。この段階で、株主に対して上場廃止の理由と今後のビジョンを説明し、理解を得ることが重要です。
2. 証券取引所への通知と手続き
株主総会での承認が得られた後、証券取引所に対して上場廃止の申請を行います。取引所は企業の状況や上場廃止の目的を審査し、適正と認められれば上場廃止が承認されます。その後、上場廃止銘柄として「整理銘柄」に指定され、最終的には取引が終了します。整理銘柄の指定期間中も取引が行われるため、この期間に株式の買い戻しや資金調達が行われる場合もあります。
3. 株式の買い取り手続き
MBOやTOBによる上場廃止の場合、経営陣や親会社が自社株式を買い取ることで、上場廃止後の経営権を安定化させる必要があります。この際、株式買付け価格の公正さが重要であり、第三者機関の意見を基に適正価格が設定されます。買い取り価格が低すぎると、既存株主からの反発を招く恐れがあるため、適切な評価が不可欠です。
4. 金融機関や取引先への説明・理解獲得
上場廃止の決定は、金融機関や取引先にも大きな影響を与えるため、十分な説明が必要です。非上場化後も取引や融資を継続するために、上場廃止の理由や将来的な経営計画について詳細に説明し、信頼関係を維持することが重要です。また、上場廃止が企業にとって前向きな決断であることを強調し、安定した事業運営を約束することが、ステークホルダーの信頼を得るための鍵となります。
5. 上場廃止後の内部体制の整備
上場廃止後は、これまでのガバナンスや開示基準が変わるため、非上場企業としての内部体制を再整備する必要があります。財務情報の管理や社内統制の仕組みを整備し、株主や外部ステークホルダーに対する説明責任を果たす準備を進めます。また、従業員に対しても上場廃止後のビジョンを共有し、長期的な成長を目指した取り組みを行うことが求められます。
上場廃止後の企業運営とそのメリット
上場廃止後、企業は新しい経営体制の下で内部体制を再構築し、上場維持のために求められていた義務から解放されます。この自由度により、企業運営がより効率化し、持続可能な成長を目指した取り組みが可能となります。以下に、上場廃止後の企業運営とそれに伴う主なメリットを説明します。
1. 内部経営体制の再構築
上場企業である間は、四半期ごとの財務報告や株主総会での決定事項の公開など、定期的な情報開示が義務付けられています。上場廃止後はこれらの開示義務から解放されるため、経営陣は内部経営に専念でき、体制の効率化が図れます。これにより、企業は柔軟な戦略を立てやすくなり、社内リソースを最適化することができます。
2. 非上場企業としてのリスクマネジメント
非上場化により、外部株主からの影響がなくなり、リスクマネジメントに関しても独自の戦略を取ることができます。特に、内部監査やガバナンスの再整備を行い、事業の透明性を確保しつつも、過度なコンプライアンスコストを削減することが可能です。これにより、経営陣はより長期的なリスク管理を重視し、経営基盤を強化することができます。
3. 経営の効率化と短期的な収益性の改善
上場廃止後は、四半期ごとの業績に対する市場からのプレッシャーがなくなるため、長期的な視点での事業運営が可能になります。企業は、利益の最大化よりも、持続可能な成長に注力でき、経営効率が向上します。さらに、非上場化によりガバナンス維持にかかる費用や報告義務が軽減されるため、短期的な収益性の改善も期待されます。
4. 企業文化の再構築と従業員のエンゲージメント向上
非上場化により、株主の意見を気にせずに企業文化を再構築し、従業員のエンゲージメントを高める施策に注力することができます。上場企業の場合、短期的な株価の影響を考慮する必要がありますが、非上場では長期的な視点に立った従業員教育や福利厚生の向上が可能です。こうした環境が整うことで、従業員の士気が上がり、企業全体としてのパフォーマンス向上が期待されます。
上場廃止のデメリットと対策
上場廃止には多くのメリットがある一方で、企業や株主にとっていくつかのデメリットもあります。以下に、代表的なデメリットと、それに対する対策について説明します。
1. 株主への影響
上場廃止は、既存株主に大きな影響を与えます。特にMBO(マネジメント・バイアウト)による上場廃止では、経営陣が株式を買い取ることで非上場化が進められますが、買い取り価格が市場価格より低い場合、既存株主からの不満が出る可能性があります。これに対する対策としては、第三者の意見を参考にした適正価格での買い取りや、株主への透明性ある説明が重要です。また、買収後の経営戦略や企業の成長計画を示し、株主の理解を得ることも必要です。
2. ブランド力の低下
上場企業の肩書きは、顧客や取引先、金融機関に対する信頼の証として重要です。上場廃止によって「上場企業」としてのブランドが失われると、取引先からの信頼が低下する可能性があります。これに対する対策としては、上場廃止後も高い品質と透明性を維持するために、業績や重要事項に関する自主的な情報開示を継続することが有効です。また、金融機関や取引先に対して、上場廃止の背景やメリットを十分に説明し、信頼を損なわないよう努める必要があります。
3. 資金調達能力への影響
上場企業は、株式市場を通じて比較的容易に資金を調達できますが、上場廃止後は資金調達手段が限定されるため、必要な資金の確保が難しくなる可能性があります。この課題に対しては、上場廃止前に金融機関やプライベートエクイティファンドとの関係を強化し、融資やプライベートな資金調達ルートを確保することで対応できます。さらに、非上場企業ならではの柔軟な資金運用を実現することで、資金面での安定を図ります。
再上場の戦略と事例
上場廃止を選んだ企業が経営改善や成長を実現した後に再び上場を目指す戦略をとるケースもあります。ここでは、再上場に至るための戦略や成功要因を解説し、再上場を果たした企業の事例を紹介します。
1. 再上場に向けた準備とプロセス
再上場を目指すためには、まず企業が経営基盤を再構築し、財務状況を安定させることが必要です。上場廃止後、企業は市場や株主からの短期的な業績プレッシャーから解放されるため、持続可能な成長戦略に注力できます。再上場を目指す場合、企業は安定した利益を確保し、資本市場からの評価が得られるよう、十分な経営改善と収益の向上が求められます。また、内部統制やガバナンスの強化を行い、再上場に必要な条件を整えることが重要です。
2. 再上場を目指すための資金調達戦略
再上場を視野に入れた企業は、上場廃止後にプライベートファンドや金融機関からの融資を受けることが一般的です。これにより、財務安定性を保ちながら企業成長のための資金を確保し、経営基盤を強化します。また、プライベートファンドの支援を受けることで、資金調達がスムーズになり、再上場のプロセスに備えることができます。
3. 再上場後の成長戦略と企業価値の向上
再上場を果たした企業は、上場前の事業成長を再確認し、企業価値の向上に努める必要があります。再上場後は株式市場の監視が再び必要になるため、継続的な業績向上と投資家への透明性確保が重要です。長期的な成長戦略に基づいた事業運営とガバナンスを維持し、企業の競争力を強化することが再上場後の成功につながります。
4. 再上場の事例:株式会社ワールドとデル・テクノロジーズ
アパレル大手の株式会社ワールドは、経営再編のためにMBOで一度上場廃止を選び、その後成長の軌道に乗せてから再上場を果たしました。また、米国のデル・テクノロジーズは、経営の自由度向上を目的に非上場化し、その後積極的な投資と事業拡大を通じて再上場しています。これらの企業は、上場廃止を経て経営基盤を強化し、再び株式市場に参入するという戦略を成功させた例です。
結論
上場廃止は、企業にとって単なる経営の後退ではなく、戦略的な成長や再建を目指す重要な選択肢であることがわかります。企業が上場廃止を決断する背景には、短期的な株主のプレッシャーから解放され、長期的な成長戦略を優先したいという意図があり、上場廃止を通じて自由度の高い経営を実現しようとする企業が増えています。
上場廃止は、コスト削減や経営権の安定化、敵対的買収の防止といったメリットをもたらし、企業がより効率的かつ柔軟に経営できる環境を整えます。また、上場維持に必要な報告義務やコーポレート・ガバナンスの負担から解放されることで、資金やリソースを長期的な投資に集中できるようになります。
一方で、上場廃止には「上場企業」としてのブランド価値が損なわれるリスクや、資金調達手段の制約といったデメリットも伴います。しかし、適切な準備と説明、ステークホルダーとの信頼関係の維持に努めることで、これらのデメリットを最小限に抑えることが可能です。
さらに、企業が十分な成長を遂げた後に再上場を目指すことも戦略の一つであり、実際に成功を収めた企業も存在します。再上場により、新たな資金を調達し、株式市場での価値を再確認しながらさらなる成長を図ることが可能です。上場廃止と再上場を経た企業は、持続的な成長基盤を確立し、投資家や市場からも評価されやすくなる傾向にあります。
- freee – 上場廃止とは?基準やメリット・デメリットについて解説
上場廃止の基準や手続きの流れ、上場廃止のメリット・デメリットについて幅広く解説しています。上場廃止によりコスト削減や経営権の集中が実現できる一方で、ブランド価値の低下などのデメリットについても説明しています。
freee - SOICO – 上場廃止とは?要因・メリット・デメリット
上場廃止に至るケースやそれによる経営戦略上のメリットについて解説しています。特に経営の効率化や敵対的買収の防止についての利点に焦点を当てています。
SOICO - Manegy – 上場廃止のメリットとその理由
上場廃止のメリットに関する解説を中心とした記事です。四半期決算やIR活動といった上場維持のための負担軽減について述べられており、上場廃止によるコスト削減について詳しく記載されています。
Manegy - ベリーベスト法律事務所 – 上場廃止の手続きや注意点
上場廃止の際の具体的な手続きや、株主総会での決議、証券取引所への通知のプロセスなどについて詳細に説明しています。上場廃止に伴う法的な流れが学べます。
ベリーベスト法律事務所 - ヒュープロ – 上場廃止をする際のメリットとは?
主にMBO(マネジメント・バイアウト)や親子上場解消による上場廃止の利点について述べられ、企業の経営方針転換や経営権の集中を促進する理由が解説されています。
ヒュープロ - Frontier Eyes – 上場廃止の基準・メリット・事例解説
上場廃止の基準に加え、すかいらーくやNTTドコモの具体的な事例を紹介し、企業が上場廃止を決定する背景について詳しく述べています。再上場事例もあり、企業戦略の理解が深まります。
Frontier Eyes - Money Forward – 上場廃止の理由とその後の影響
上場廃止の後、企業がどのような影響を受けるかについて記載されており、企業の成長や再建に対する戦略として上場廃止を考える際の利点が示されています。
Money Forward - クラウド会計ソフト freee – 上場廃止基準と影響について
上場廃止基準を満たせなくなる要因や上場廃止による企業運営の変化について解説し、経営者が選択する上場廃止のメリットを紹介しています。
freee - 小谷野税理士法人 – 上場廃止のメリットと影響解説
上場廃止によるステークホルダーとの関係性や、再上場の際の準備について解説しています。資金調達や株主の利益対立についても言及されています。
小谷野税理士法人