配偶者控除と配偶者特別控除は、所得税や住民税の節税を目的とした制度ですが、条件や適用範囲に違いがあります。それぞれの制度の概要、適用条件、計算方法、具体的なケーススタディを含めて詳しく解説します。
目次
1. 配偶者控除とは
配偶者控除は、納税者に一定の収入以下の配偶者がいる場合に適用される所得控除制度です。この制度は、主に専業主婦や専業主夫がいる家庭に恩恵があります。
配偶者控除の適用条件
配偶者控除を受けるためには以下の条件を満たす必要があります:
- 納税者が配偶者控除の対象となる配偶者を有していること。
- 配偶者の年間所得が48万円以下であること(給与収入の場合、収入金額が103万円以下)。
- 納税者本人の所得が1,000万円以下であること(合計所得金額ベース)。
- 配偶者が青色申告特別控除の対象者や事業専従者給与の支給対象者ではないこと。
配偶者控除の控除額
配偶者控除による控除額は、納税者の所得に応じて変動します。
納税者の合計所得金額 | 控除額(一般の配偶者) | 控除額(老人控除対象配偶者※) |
---|---|---|
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
※老人控除対象配偶者:70歳以上の配偶者
2. 配偶者特別控除とは
配偶者特別控除は、配偶者の年間所得が一定の範囲内にある場合に適用される所得控除制度です。配偶者控除が適用されない場合でも、配偶者特別控除によって節税を図ることが可能です。
配偶者特別控除の適用条件
配偶者特別控除を受けるためには以下の条件を満たす必要があります:
- 納税者が法律上の婚姻関係にあること。
- 配偶者の年間所得が48万円を超え、133万円以下であること(給与収入の場合、収入金額が103万円超201万円以下)。
- 納税者本人の所得が1,000万円以下であること(合計所得金額ベース)。
- 配偶者が青色申告特別控除の対象者や事業専従者給与の支給対象者ではないこと。
配偶者特別控除の控除額
配偶者特別控除の控除額は、納税者の所得および配偶者の所得に応じて変動します。以下は配偶者の年間所得金額ごとの控除額の早見表です。
配偶者の所得金額(万円) | 控除額(納税者の合計所得金額900万円以下の場合) |
48万円超〜95万円以下 | 38万円 |
95万円超〜100万円以下 | 36万円 |
100万円超〜105万円以下 | 31万円 |
105万円超〜110万円以下 | 26万円 |
110万円超〜115万円以下 | 21万円 |
115万円超〜120万円以下 | 16万円 |
120万円超〜125万円以下 | 11万円 |
125万円超〜130万円以下 | 6万円 |
130万円超〜133万円以下 | 3万円 |
※配偶者控除と異なり、配偶者特別控除は配偶者の収入が増えるに従って段階的に減少します。
3. 配偶者控除と配偶者特別控除の違い
適用対象
- 配偶者控除は、配偶者の年間所得が48万円以下(給与収入103万円以下)の場合に適用されます。
- 配偶者特別控除は、配偶者の年間所得が48万円を超え、133万円以下(給与収入103万円超201万円以下)の場合に適用されます。
控除額の変動
- 配偶者控除の控除額は、納税者の所得に応じて固定的です。
- 配偶者特別控除の控除額は、配偶者の所得が増えるに従い段階的に減少します。
制度の対象範囲
- 配偶者控除は専業主婦や専業主夫がいる世帯に限定される傾向があります。
- 配偶者特別控除は、共働き世帯にも適用されるため、幅広い家庭が対象となります。
4. 具体例による比較
ケース1: 配偶者の収入が103万円以下の場合
- 配偶者控除が適用され、控除額は38万円(納税者の所得900万円以下の場合)。
- 配偶者特別控除は適用されません。
ケース2: 配偶者の収入が150万円の場合
- 配偶者控除は適用されません(配偶者の所得が48万円を超えているため)。
- 配偶者特別控除が適用され、控除額は11万円(納税者の所得900万円以下の場合)。
ケース3: 納税者の所得が1,000万円を超える場合
- 配偶者控除も配偶者特別控除も適用されません(高所得者は控除対象外)。
5. 注意点と申告方法
注意点
- 控除を受けるためには、適切な証明書類を準備する必要があります。
- 年末調整または確定申告の際に、配偶者の所得状況を正確に把握しておくことが重要です。
- 配偶者特別控除は配偶者の収入が増えると段階的に控除額が減少するため、収入の変動に注意が必要です。
申告方法
- 会社員の場合: 年末調整時に「配偶者控除等申告書」を提出します。
- 自営業の場合: 確定申告時に必要事項を記載し、申告します。
6. 結論
配偶者控除と配偶者特別控除は、家庭の収入状況に応じて節税を可能にする重要な制度です。適用条件や控除額を正しく理解し、計画的な収入管理を行うことで、家庭の経済的負担を軽減できます。どちらの制度を活用するかは、配偶者の収入額や納税者の所得状況によって異なるため、家計全体を見据えた計画が必要です。