配当控除の全貌|総合課税と申告分離課税の選択で損をしない方法

 

日本の税制における総合課税の配当控除は、株式などの配当所得を得た際に、二重課税の負担を軽減する仕組みです。具体的には、配当所得に対して所得税と住民税が課される際、一定の控除を適用することで、税負担を軽減します。この制度は、株主の経済的利益を守るだけでなく、株式投資を促進し、企業活動を支える目的もあります。


配当控除の対象

配当控除が適用されるのは、国内法人から受け取る配当金が主な対象です。ただし、以下の条件や対象外となるケースがあります。

  1. 対象外の配当所得
    • 証券口座で申告分離課税を選択した場合
    • 特定目的会社(SPC)や投資信託の収益分配金
    • NISA(少額投資非課税制度)口座で受け取る配当
  2. 総合課税を選択した場合のみ対象
    配当所得を総合課税で申告した場合に限り、配当控除が適用されます。申告分離課税を選択すると、配当控除は適用されません。

配当控除の計算方法

配当控除額は、所得税と住民税に対して異なる割合が適用されます。以下の計算式が基準です。

1. 所得税における配当控除

  • 控除額 = 配当所得 × 控除率(10%または5%)
    • 所得税の配当控除率は、課税総所得金額によって変動します。
    • 課税総所得金額が1,000万円以下:10%
    • 課税総所得金額が1,000万円超:5%

2. 住民税における配当控除

  • 控除額 = 配当所得 × 2.8%
    • 住民税における配当控除率は、所得税に比べて低めに設定されています。

配当控除の申告方法

配当控除を受けるには、確定申告が必要です。具体的な手順は以下の通りです。

  1. 配当所得の確認
    株式の発行元から送付される「配当金支払通知書」を用意します。ここには、配当金額や源泉徴収額が記載されています。
  2. 確定申告書の作成
    配当所得を「総合課税」として申告します。確定申告書B様式に配当金額を記載し、「配当控除額」の欄に計算した控除額を記入します。
  3. 必要書類の提出
    配当金支払通知書や証券会社からの年間取引報告書など、必要書類を添付して税務署に提出します。

総合課税の配当控除のメリットと注意点

メリット

  1. 二重課税の負担軽減
    配当控除により、法人税と所得税の二重課税を軽減できます。
  2. 税率が有利になる可能性
    総合課税を選択した場合、配当控除の効果により、実質的な税率が低下するケースがあります。
  3. 所得全体を考慮した最適な税制選択
    配当控除を活用すると、総合課税での申告が有利になる場合があります。

注意点

  1. 課税所得金額による控除率の違い
    課税所得が1,000万円を超えると、控除率が低下するため、総合課税が必ずしも有利とは限りません。
  2. 申告分離課税との比較が必要
    配当控除を受けるためには総合課税を選択する必要がありますが、申告分離課税を選択した方が税負担が軽減されるケースもあります。
  3. 住民税での配当控除率が低い
    所得税に比べて控除率が低いため、住民税の軽減効果は限定的です。

総合課税と申告分離課税の比較

配当所得を申告する際には、総合課税と申告分離課税のどちらが有利かを検討する必要があります。それぞれの特徴を以下にまとめます。

項目 総合課税 申告分離課税
税率 累進課税(最大45%) 一律20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)
配当控除の適用 適用あり 適用なし
損益通算 他の所得と損益通算可能 株式譲渡益と通算可能
メリット 二重課税の軽減 税率が低い

配当控除の活用例

ケース1: 課税所得が少ない場合

課税所得が1,000万円以下の場合、配当控除率が10%適用されるため、総合課税を選択することで税負担が軽減されます。特に、年金生活者や低所得者の場合、総合課税が有利になることがあります。

ケース2: 高所得者の場合

課税所得が1,000万円を超える場合、配当控除率が低下します。また、総合課税では所得税の最高税率が適用されるため、申告分離課税の方が有利になるケースが多いです。


配当控除のまとめ

総合課税の配当控除は、配当所得にかかる税負担を軽減する重要な仕組みです。しかし、課税所得額や他の所得との関係によって、申告分離課税の方が有利になる場合もあります。自分の所得状況や投資環境を考慮し、確定申告時に最適な税制を選択することが重要です。専門家への相談を活用して、最大限の節税効果を得ることをおすすめします。