目次
1. はじめに
「123万円の壁」という言葉は、近年の税制改正により新たに注目を集めています。これは主に配偶者控除や特別控除の適用条件に影響を与えるものであり、主婦やパート・アルバイト労働者にとって働き方や収入調整の指標となります。この記事では、「123万円の壁」の概要、背景、その影響、具体的な事例、および対応策について詳しく解説します。
2. 「123万円の壁」の概要
「123万円の壁」とは、年間収入が123万円を超えると所得税が課され始める基準を指します。これは従来の「103万円の壁」が2025年度の税制改正により引き上げられたものです。
- 対象者: 配偶者控除や配偶者特別控除の適用を受けたい主婦、扶養内で働きたい人、学生アルバイトなどが主な対象となります。
- 収入基準: 年間収入が123万円以下であれば所得税が非課税となりますが、123万円を超えると税負担が生じます。
3. 背景と税制改正の経緯
税制改正の背景には、働き方の多様化や少子高齢化による税収構造の変化があります。
- 基礎控除と給与所得控除の改定: 税制改正により、基礎控除が48万円から58万円に、給与所得控除の最低額が55万円から65万円にそれぞれ引き上げられました。この改定が「123万円の壁」を生み出す直接的な要因となっています。
- 労働市場の影響: 少子高齢化に伴い、労働力人口を増やすため、パートタイム労働者や主婦がより働きやすい環境を整える必要性が高まりました。
- 扶養控除制度の見直し: 世帯全体の税負担を適正化する観点から、控除制度が調整されています。
4. 配偶者控除と配偶者特別控除の仕組み
配偶者控除および配偶者特別控除は、配偶者の収入状況によって税負担が変動する制度です。
- 配偶者控除: 配偶者の年間収入が123万円以下の場合、扶養者(主に夫)は38万円の控除を受けられます。
- 配偶者特別控除: 配偶者の年間収入が123万円を超える場合、段階的に控除額が減少します。201万円以上になると控除は受けられなくなります。
具体的には以下のような段階があります。
配偶者の収入(万円) | 配偶者控除額(万円) |
---|---|
123万円以下 | 38万円 |
123万円超~150万円 | 38万円~3万円 |
150万円超~201万円 | 3万円~0円 |
5. 影響を受ける人々と課題
「123万円の壁」は主に以下の人々に影響を与えます。
主婦
主婦は配偶者控除の適用を受けるために収入を調整する傾向があります。「123万円の壁」の引き上げにより、より多く働ける選択肢が広がる一方で、収入調整の基準が複雑化しています。
パート・アルバイト労働者
扶養内で働くパート労働者も影響を受けます。特に、社会保険料負担が発生する106万円の壁との兼ね合いが課題です。
学生アルバイト
学生アルバイトは親の扶養控除に影響を与える可能性があります。税制改正後、年間収入が123万円を超えても、特定親族特別控除が適用されることで親の負担が軽減される仕組みが導入されました。
6. 具体的な事例と影響の試算
以下は具体的な事例です。
- 事例1: 配偶者の年間収入が120万円の場合
- 所得税は非課税。
- 配偶者控除が適用され、扶養者は38万円の控除を受けられる。
- 事例2: 配偶者の年間収入が130万円の場合
- 所得税が課税対象。
- 配偶者特別控除が適用されるが、控除額が減少する。
7. 「123万円の壁」と社会保険の壁
「123万円の壁」と並行して考慮すべきは「社会保険の壁」です。
- 106万円の壁: 従業員50人以上の企業で週20時間以上働く場合、収入が106万円を超えると社会保険に加入する義務が生じます。
- 130万円の壁: 中小企業で扶養控除の適用を受ける場合、収入が130万円を超えると社会保険料が自己負担となります。
8. 対策と収入計画
「123万円の壁」に対応するためには、収入の計画的な管理が重要です。
労働時間の調整
パートタイム労働者は労働時間を調整することで、収入を壁の範囲内に抑えることが可能です。
フルタイム勤務への切り替え
社会保険料の負担を受け入れた上でフルタイム勤務に切り替え、収入を増やす選択もあります。
税理士への相談
収入や控除に関する不安がある場合、専門家に相談することで最適な働き方を模索できます。
9. おわりに
「123万円の壁」は、税制改正に伴う新たな収入調整基準として注目されています。この制度は、働き方や家計に大きな影響を与える一方で、働き手に多様な選択肢を提供します。自分の状況に合った収入計画を立て、賢く制度を活用することが重要です。